糖鎖の持つ様々な生理学的役割とは

糖鎖というと、デンプンとかグリコーゲンのように単なるエネルギー源と思っている人が多いかもしれませんが、人間の体はそんなに単純なものではありません。

最近では免疫系に大きく関与してきていることが判明しつつありますが、別に最近の知見だけに基づかなくても、昔から分かっていることでそれを類推できる話はあります。

ABO式の血液型がそうです。

血液型とは赤血球のタイプを示していることは知っているでしょうが、生理学的に言って具体的に何がどう違うのかまで知っているでしょうか。

これは実は赤血球の表面にどのような糖鎖があるかによって決まっているのです。

非常に物事を単純化して話してしまいますと、A型の赤血球表面にはガラクトースと呼ばれる糖が少し変形したものがあります。

B型にはグルコースと呼ばれる糖が少し変形したものがあります。

AB型の人にはこの2種類の糖のいずれも見ることができます。

一方でO型の人はどちらもありません。

血液型は、合わない人の血液を輸血すると相手を異物と認識して固まってしまい、命にも関わるようなことは良く知られていますが、相手を異物と認識するのはまさしく免疫作用そのものであって、何に基づいて生体はそれを判別しているのかと言えばこの赤血球表面にある糖です。

タンパク質でもDNAでもなく、脂質でもない糖質こそが、自己と異物を見分けるための極めて大きなカギになっていることはこの例からも明らかだということになります。